居住福祉研究31号

 

「居住福祉」は感染症対策の本質をつく

日本居住福祉学会編の「居住福祉研究31号」(東信堂)が9月末に発行されました。「巻頭言」は日本医師会副会長の今村聡さんの「新型コロナ禍の住まいと住まい方」。特集は「提言 新型コロナ危機と居住福祉の課題Ⅱ」です。

コロナの影響もあって本誌の発行が遅れ、掲載されたのは、2020年11月にオンラインで開催された日本居住福祉学会全国大会での稲葉剛さん(一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事)の記念講演「災害時の居住課題に支援の連携を」や、シンポジウムでの阪東美智子氏(国立保健医療科学院)「感染症対策における公衆衛生の課題」、野村友子氏(社会福祉法人きらくえん)「高齢者介護施設の現状と課題」、葛西リサ氏(追手門学院大学)「シングルマザーの観点から」ですが、1年近く経っても、これらが「時期外れ」に見えないのは「居住福祉」という観点が本質をついているからにほかなりません。

このほか、コロナ禍において増加する生活困窮者への居住支援施設の現状(斎藤宏直・みやぎ「こうでねいと」理事長)、公営住宅住民のコロナ禍への対応(松岡洋子・東京家政大学ほか)など6本の提言が掲載されています。

「換気」と「断熱」という冬場の相反する問題にどう対処するか

中でも、日常生活に役立つ論考が上原裕之氏(一般社団法人健康・省エネ住宅を推進する国民会議)の「パンデミックへの対処は住居改善から」です。コロナ感染所への対応には「換気」が重要とされていますが、冬場になれば今度は、外の寒気から住宅内を守る「断熱」が重要になります。慶応大学の伊香賀俊治教授らは「室温18度以上というWHO勧告を満たしている日本の住宅は1割にすぎない」という現状をどう改善していくのかという提言がされています。

東信堂刊、1000円+税