《琉球弧の要塞化》、とくに宮古島の近時の状況に関する日本居住福祉学会会長声明
イギリスのグラスゴーで「環境危機」「生物多様性危機」が世界的に議論される今、奄美大島、徳之島、沖縄北部、西表島の琉球弧の島々が、2021 年7月に「世界自然遺産」に登録されたことが想起されます。その半面、沖縄本島への米軍基地集積問題のみならず、琉球弧の要塞化が急速に進められ、自衛隊基地の拡充が進められていることに懸念を抱きます。
我々は 2021 年 11 月9日に「国防と居住福祉」をテーマに「居住福祉オンライン研究会」を開催し、とくにその最前線に立つ「宮古島」の近況について議論しました。その前日、防衛省の要請を受けて座喜味宮古島新市長が、弾薬の搬入に同意したと報道されました。
昨今の米中間の緊張にあって、我が国が経済的関係その他緊密な関係に立つ隣国の中国との外交のあり方は、軍備増強の前に、東アジア全体の連携を強めるなどやるべきことが多々あるように思います。我々も草の根の国際的学術交流の必要性を痛感して「日中韓居住問題国際会議」を開設して 20 年程になります。当学会創設者の早川和男博士は、平和が「居住福祉の基盤」をなすと、常時説いておられました。
ところで宮古島において近時の国防の急拡大から居住地域の至近距離に弾薬庫が造られるなど、地域住民の「居住福祉」や「自然環境」が深刻な危殆に晒されていることに懸念を抱きます。地域住民への「充分な説明と同意」なしに、開発の極ともいえる「弾薬・ミサイルの配備」を進めることは、2007 年の「国連先住民族の権利宣言」にも明らかに反する行為です(因みに、島民の琉球民族は先住民族です)。パレスチナで炸裂するロケット弾の惨状を見ても軍事行動が居住福祉の根底を脅かすことは明らかです。
こうした居住福祉の根底を揺るがす深刻な事態に対して、居住福祉学の見地から警告を発し、地域住民との手続的正義を尽くすことを求めます。さらに「世界自然遺産」への道義的要請と、それに準じる宮古島の素晴らしい自然環境と相容れない行為は可及的に避けるべきことは、かつてのユネスコ事務局長松浦晃一郎氏も強調されています。この点にも留意して頂けますようお願いします。
2021 年 11 月 11 日
日本居住福祉学会会長 岡本 祥浩